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学校間の競争は学校の質を高めるか

「学校に競争させてもしょうがない」……過度に単純化すればそういうことを言いたいのかな (?) と思われるペーパーを Journal of Public Economics の最新号に見つけた: Gianni De Fraja and Pedro Landeras, Could do better: The effectiveness of incentives and competition in schools, Journal of Public Economics, Volume 90, Issues 1-2, January 2006, Pages 189-213.

ボクは「教育は特別だ.一般企業と同等な経済的効率性で測ることはできない」といった類いの,教育関係者にありがちな非科学的態度というか,反経済学的精神論があまり好きでない (リマーク参照).競争は大切だと思う.しかし,自分が大学という教育機関にあって,非生産的な浪費としか考えられない類いの妙な競争が流行しているのを見るにつけ,なにかおかしいと感じて来た.いまの競争は,便益は一切抜きにして,コストの大きさだけを教員に競わせているのではないかと思えるほどだ.(しかもコストが低い方が望ましいのではなく,高い方が望ましいことになっている.)

このペーパーはそのような単純な費用便益の観点からのものではない.もう少しひねりがある.「顧客の特質が学校のアウトプットの質に影響を与える」という,普通の企業じゃあまり見られない "customer-input technology" という特徴を重視しているのだ.教育機関を特別視しているんだが,その程度なら許そう.

経済学のペーパーだけど,苦手なモデルを使っているので,解説はしない.読者の中に,自分ならうまく解説できるというひとがいれば,コメントするなり,トラックバックするなりしてくれるといい.なお,html のフルテキストの方はかなりめちゃくちゃなので,読むなら pdf か印刷版を読むべきだ.

リマーク.一般に,ある文章に「経済的効率性」という言葉が出て来たら,その文章はひじょうに高い確率で非科学的・非論理的なものであるので,疑ってかかった方がいい.たとえ「経済効率性を高めることが重要だ」という方向の議論であったとしてもだ.経済学者は通常,「効率性」に「経済的」という形容をしない.(「それはちがう」と思う経済学徒はコメントしてくれ.経済学者の一部にそういう「方言」を使うグループもあるかもしれない.) その形容をするときは,読者に迎合するなどの,なにか特別な意図があるときだ.

【2006/01/15 12:43 】
| 社会科学 | コメント(5) | トラックバック(0) |
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コメント
 私は「経済効率」という言葉を日下公人を批判する文脈で使ってしまいました。恥ずかしい。
 お返しに「マスコミでよく見かけるけど、専門家は絶対使わない言葉」をいくつかお教えします。
・死体を検死する
 警察官が異状死体を調べる行為は「検視」、医師が異状死体を調べる行為は「検案」です。
・医薬品を調合する
 薬剤師が薬局で行っている行為は「調剤」、製薬会社が行うのは「製造」。
【2006/01/15 15:41】
| URL | Inoue #WjBz4HtQ[ 編集] |
経済学者は言葉使いにはそんなにうるさくないです.数学的オブジェクトとしてきちんと定義してくれさえすれば,それを何と呼ぼうと本質的な違いはないから.それなのに,なぜ「経済効率」という言葉はダメ文章のシグナルになるのか.それは経験上は言えるのですが,ダメな理由を説明するのは意外に難しいです.

経済学は経済を扱っているため,いちいち「経済的」「経済学的」という言葉を入れても限定にならないことが多いです.そのため「経済的」という言葉を使わないだけかもしれません.だとしたら,べつに「経済的」と言ってもまちがいではないことになります.でも,「効率」と繋げられるのはあまりにも意図的な文脈が多いのです.「経済学ではこうだが,これは経済学の領域ではない」あるいは「経済活動にかんする効率性ではこうだが,これは経済活動ではない」と言いたそうに聞こえます.

しかし,「効率性」はべつに経済活動だけを対象とした概念じゃないし,効率かどうかの判断基準になるのも人々の価値観 (や技術的制限) であって経済学者じゃないです.パレート最適性などを通常意味する「効率的」という言葉が何によって定義されるのかを見れば,「選好」 (や生産技術) ということになります.そして,「選好」は選択肢を順序づける関係です.選択肢が経済的意味を持つもの (たとえば商品バンドル) ならば,(ほとんど聞かないが)「経済的選好」「経済的効率性」という言葉もおかしくないでしょう.でも,「選好」という概念はべつに選択肢が (選挙の候補者とか社会状態の完全な記述といった) 経済的な意味をほとんど持たないばあいでも使えます.区別するために「社会的選好」などというと別のもの (社会をひとりの個人とみなした選好) になってしまうので,ふつうはどちらも「選好」と言います.本来的に経済現象に限定されない概念である「効率性」に,わざわざ「経済的」という言葉を添える必要は(ひとつのモデルの中で社会的な選択肢と経済的な選択肢を同時に考えるといったばあいをのぞいて) ほとんどないと思います.必要ないものを添えるのは,やはり何らかの意図があるか,必要ないことが分かってないのでしょう.

まあ,使っても間違いとはいえない言葉を使うことがダメさを露呈しているという議論を展開するのは難しいですね.考えはじめると,かえって使うことを正当化する理由を思いつきます.使っているひとがそこまで考えて使っているわけでない,というところに帰着するのかも.
【2006/01/15 21:37】
| URL | 平凡助教授 #-[ 編集] |
こんにちは。
 学生募集活動の便益評価のことですが、評価はともかく、調査そのものは簡単ではないのですか?
 入試出願時あるいは入学手続きの時に、オープンキャンパスに参加したかどうか、広報資料をどういうルートで入手したのか、どういう動機でこの大学の受験を決めたのか、などを調査すればいい。マークシートにしておけば集計の手間はかかりません。
【2006/01/24 14:51】
| URL | Inoue #WjBz4HtQ[ 編集] |
本文で書いた費用便益は,教育とか研究とかいろんなもののことを言っています.
-「研究の地域還元」とか言って,だれも読まない1000ページくらいの冊子 (一年分の業績しか載っていない) を作るために,それ専用の業績調査をする (学部内,全学,学外,その他でも同様の調査をバラバラの時期にバラバラの様式でやるのに; ちなみに千ページのほとんどは医学部関係),
-数人しか受験しない特殊な入試を年に何回もやる,
-シラバスを全学統一するために,極めて入力しにくいフォームに学内パソコンから入力させる
などです.特に学生募集活動のことを言ったわけではないです.

学生募集活動の評価は,入試難易度が上がったかどうかの一点でいいかもしれません.うちの大学で採用している,入試競争率で評価する方法よりはマシでしょう.応募しなかったひとの意見を捨象してしまうアンケートは注意が必要ですが,ミクロ的な情報を得るには有用でしょう.
【2006/01/25 14:55】
| URL | 平凡助教授 #-[ 編集] |
>特に学生募集活動のことを言ったわけではないです.

なるほど、そうでしたか。
 しかし、大学独自の収入源としては、入試ほど儲かる事業はないので、受験者数を増やすのは非常に大事なことです。(数人しか受験しない入試などは費用の方が大きいでしょうが)
【2006/01/26 06:15】
| URL | Inoue #WjBz4HtQ[ 編集] |
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