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退屈な穴埋め作業ぼちぼち進行中

表の穴埋めという,tedious (退屈な) な作業の続くこのごろである.気分転換も兼ねて,何のことか説明しよう.

いま yes/no で答えられる基準があるとする.たとえば日本人を,男性/非男性(=女性,おそらく) とか (住民票上での) 東京在住者/非東京在住者 (東京非在住者?) に分けるような話である.基準がひとつならば対象は概念上 2 つに分けられる.基準がふたつならば,対象は4つに,三つならば 9 つに,四つならば 16 個に,五つならば 25個に,六つならば36個に---おっとまちがえた---三つならば 8つに,四つならば 16 個に,五つならば 32個に,六つならば 64個に分けられる.ところが概念上あるカテゴリが存在することと,実際にそのカテゴリに対象物が存在することとは違う.たとえば,「北海道在住で米国 MBA で東大工学部出身でオタク」なら存在するかもしれないが,「北海道在住で米国 MBA で東大工学部出身で非オタク」は現実には存在しないかもしれない.概念上考えられるカテゴリーに理論上あるいは経験上 対象物が存在しないとき,そこにひとつの (理論的あるいは経験的な) 命題が生まれる

ボクが共同研究者と現在進めている研究 (の一部) は,yes/no の二値で答えられるような基準を六つ持って来て,それによって考えられる26=64個のカテゴリのそれぞれに実際に対象物が存在するかどうかを調べるものだ.その作業をひとつひとつしらみつぶしにやっている (ただし 16 個分のカテゴリについては,存在しないことが作業前から分かっていた).「なんて単純な作業だ!」と思われるかもしれないな.

リマーク.関心あるオタクのために書くと,提携ゲーム (協力ゲーム) のひとつである単純ゲーム (投票ゲーム) を monotonicity,properness,strongness,nonweakness,そして極秘の二つの基準によって 64 カテゴリに分類しているのである.簡単なばあいとして有限人数の単純ゲームに限れば,そして具体的に挙げた最初の4つの基準だけで分類すれば,たとえばそれら4つのいずれも満たさないようなもの (---- と表記) は存在しない.Weak なゲームは proper になるからだ. (以下,基本的には- は non に対応; ただし最後の記号は - が weak を + が nonweak を表す.) 同じ理由で +-+-, +---, --+-, ---- で表記されるカテゴリに入る単純ゲームは存在しない.他にも,non-monotonic で proper で strong で weak な単純ゲーム (-++-) は存在しない.Weak で strong な単純ゲームは dictatorial となり monotonic になるからだ.これら5個以外の 11個のカテゴリについては,そのカテゴリに属する単純ゲームが存在することが,具体例を作ることによってしめすことができる.簡単で単純な作業なので,暇人は試みられるといい.もっと暇人は,与えられた有限単純ゲームがそれぞれの性質を満たすかどうかを判断するコンピュータプログラムや,このような具体例を自動生成するプログラムを書いてみると工学部当たりの卒業論文にできるのではないだろうか.責任は持たないが.(このリマーク内の用語はこちらのペーパー の Section 2.1 に載っている.)

リマークに書いた例はいずれも簡単に作れるので誤解を生むかもしれない.しかしボクらの考えた微妙なカテゴリに入る例を作る作業はじっさいはちっとも単純ではない.ひとつひとつの例をつくるために,けっこう高度な技を要するのだ.例を作るための前準備としていくつかの定理とか補題とかを作る必要があって,それにかなり頭脳を投入せねばならず,ほとんど正気を失いそうである.その準備が済むと今度は個々の例を作ることになるが,こちらはとにかく退屈な作業の量に圧倒されそうで,いまにも狂いそうだ.

で,64 個の穴を埋める作業の息抜きに,まったく関係ないペーパーを読んだら,ちょっとよさそうなアイディアを思いついた.そちらのアイディアは着手するかどうか分からないし当分は秘密ということにして,代わりにわが平成香川大学 GSM (大学院地域マネジメント研究科) の学生でもできそうな実証研究ネタでも披露しよう.「比例代表制のドント方式の解説がどのサイトも下手だなあ」と思いながら思いついたものだ.

つづく

追記 (11/5/2006). この記事の投稿者から,この秋公開になった関連ペーパーの情報が届いた.たとえば「11個のカテゴリについては,そのカテゴリに属する単純ゲームが存在することが,具体例を作ることによってしめすことができる.簡単で単純な作業なので,暇人は試みられるといい」という問題の答は,このペーパーの現バージョン Section 5 にある.もちろん 64個のエントリーを持つ表も載っている.本文に述べた 6 つの基準間の関係が一本のペーパーに網羅されているわけであり,手頃なレフェレンス・ツールになっている.

Masahiro Kumabe and H. Reiju Mihara. Computability of simple games: A complete investigation of the sixty-four possibilities. MPRA Paper 440, Munich University Library, October 2006.

【2005/09/02 09:54 】
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