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(特殊な) 人類との対話

5月19日土曜日は生身の人類と対話することのできた,最近では稀に見る日だった.ただし相手は普通の人類ではない.経済学者たちだ.

生身の人類らしくさぬきうどんを食べたあと,昼下がりには平成香川大学キャンパスで行われた契約理論之研究會に参加した.興味深い報告を二つ聞いた:

  • 公共財供給問題を多人数囚人のジレンマとして解釈.事前参加自由で事後には参加も脱退も不自由な強制装置を導入した多段階ゲームによりその問題を克服.(このゲームは制度自体ではなく,制度の生成過程と解釈.) そのゲームの理論的性質と実験結果の報告 (Michael Kosfeld, Akira Okada, and Arno Riedl, August 2006, Institution Formation in Public Goods Games).そういうやり方でもいいけど,たとえば「誓約 P: 誓約 P に少なくとも10名が署名したとき,私は当該公共財供給のために指定された金額 (最大限千円) を支払います.---署名」という誓約書にサイン (give a pledge) してもらえばいいんじゃないか.ちょうど10名が署名するのがちばん自然な均衡に思える.(制度の生成過程という解釈はむずかしくなるが.) いずれにせよ全員が同じ効用関数をもつ状況では,自分が参加すべきかどうかを判断するのはかえってむずかしそう.ひとりひとりが公共財にたいするちがう評価をした方が自分が参加すべきかどうかを判断しやすいんでは.
  • 「果報は寝て待て」論文 (Lyon, T. P. and E. Rasmusen, 2004, Buyer-option contracts restored: renegotiation, inefficient threats, and the holdup problem, Journal of Law, Economics, and Organization, Vol. 20, No. 1, pp. 148-169) とその拡張.Econometrica 掲載の拡張のほうはまったく魅力的に聞こえない報告だった.面白い部分をわざと省いたわけでもなかろうが.「果報は寝て待て」とはボクが勝手につけたラベル.不正確かも.ある特注製品を一万円で取引する約束をかわした.売り手は注文どおりきちんと製造した.ところが買い手が「高すぎるから」といって再交渉を要求して来た.特注品であるためほかに売り手がつくような代物ではない.売り手は買い手の要求をのまざるをえなくなる……なんてシナリオを考えると,「そんならはじめから取引しないことにしよう!」と売り手は思ってしまうかもしれない (ホールドアップ問題).上記論文は,その特注品の価値がある「期限」において突然なくなると仮定.(あるいは価値が急激に下がると考えてもいいだろう.) そうすると売り手は取引をしてもだいじょうぶになる.しかも再交渉に応じる必要もない.なぜなら買い手は損をしない価格であれば「期限」が来る前に買うことになるので.一万円はもともと損をする価格ではないから,買い手は受け入れる.値切られるだけの再交渉にわざわざ売り手が参加する意味はない (一方で買い手は値切るためにのみ交渉をする).「果報は寝て待て」である.やけに分かりやすい話だ.(再交渉がなりたつとしつこく主張するひとが聴衆のなかにいたので,ボクがなにか誤解してるのかも.)

研究会のあとは,飲み屋で夕食会することになった.いや,すでにそう計画されていたらしい.「うちの大学の者がみなさんを店までご案内します」と,今回の研究会の受け入れ先であるわが大学経済学ワークショップの世話人が勝手に宣言した.さてボクは「うちの大学の者」として行動すべきか否か.(経済学ワークショップというのは「経済学部の」ワークショップであり,所属がちがうボクはノンメンバーなのだ.ワークショップの開催案内もふだんは受け取っていない.) 参加者たちは経済学部本館の一階にあつまって来たが,ボク以外のわが大学の人間は待てど暮らせど来なかった.しょうがない.(経済学者としてのパーマネントジョブを求職中のわがゼミ出身者 W さんには申しわけないが) 人道的見地から,ボクは動くことにした.

リマーク.「経済学部本館」という名称はじつは消滅している.特に分かりやすい名前でもないし,経済学部以外に法学部やロースクール (そして GSM) も利用するからであろう.もちろんこの由緒正しい名称を経済学部は保存したかったと聞いているしボク個人も保存してもらいたかった.しかし経済学部というのは,いろいろと GSM 叩きの多い (特に施設にたいする既得権益の主張が強すぎる) 不良学部であるから,比較的理解のあるはずのわが GSM 代表者も (法学部やロースクールの圧倒的反対に対抗してまで) 名称保存を主張するわけにはいかなかったのだろう.

ボク:「じゃあみなさん,とりあえずこの建物の外に出ませんか!」

なんで外に出るのか理由を聞かされたわけでもないが,経済学者たちは意外と率直に経済学部本館から出てくれた.理由は「じつはこの建物の真ん中あたりは [特に奇数階] はとてももろくて,強い地震が来れば一発で崩れるんですよ」と事後的に説明.(法廷基準の 0.2 倍ていどの強度 (?) とか.「立ち入り禁止」の看板を出さなくても学長は監督責任を問われないのだろうか?) ほどなく世話人が来たので,あとはタクシー代をけちって徒歩で団体で繁華街の飲み屋に向かった.

じつは京都のゲーム理論之研究會メンバーも来ていた (部屋の後ろの方でうどん店の下調べに余念がなかった ) らしいが,大学を出発する直前まで気づかなかった.ボクが気づいたのは K さんがボクにさよならを言いにきたときだ.大学のボクの個人サイトへのリンクを更新してきたそうだ.(が,いま調べたら更新されてないじゃん.) 彼らの多くが契約理論之研究會の飲み会に合流しないのは残念だ.

路上 (途上か?),1999年の3月か2月に伊藤秀史の集中講義で大阪で出会ったことのある,《舞いちゃん》(仮名) と名乗る女性が話しかけて来た.本日の研究会の最初の発表者だったゲーム理論家 A は,「香川に行くと平凡助教授に会えるから」と言ってすすんで発表者になることを申し出たなどと教えてくれた.冗談にせよ光栄なことだ.だけどその割には (以前京都にいた) A さんは,京都グループに合流したのか帰ってしまったか知らないが,ボクらの行った店には合流しなかった.なんだなんだ! いずれにせよ「こんな発言をするなんて,ボクに好意があるのかも!」 (←A さんのことでなくて,舞いちゃんのことね) などとスケベな考えが湧いてきて浮き浮きした.(舞いちゃんの現在の勤務先より若干条件がいい大学にこちらが勤めていることを考慮すると,「好意」も割り引かねばならないが.)

もともと愛想の悪いボクは,お店では自分から「先生方」に挨拶することもなく,独りぼそっと座っていた.長期的な鬱状態にあるせいか,単に生まれつきひとに話しかけるのが苦手なせい (リマーク参照) か知らないが,どうも自分から挨拶できる心理状態ではなかったのだ.(ということで挨拶できなかったみなさん,ごめんなさい.) ボクよりさらに知人が少なくて,知っている「先生方」といえば (「雲の上」とは言わないまでも) だいぶ年齢が上の有名人ばかりになってしまう繊細な若手同僚は,ストレスで胃に穴があいたかもしれない.

リマーク.「自閉症スペクトラム指数」(こちらのプログラムで自己診断できる) で 42 点の高得点をマークした自分だ.(成人アスペルガー症候群・高機能自閉症者群の被験者グループの平均が37.9点だったそうだ.33点がカットオフ・ポイントで,その点数以上をとったのは,同グループの9割近く,健常者の 3 パーセントのみだったそうだ.) やはりアスペルガーに近い傾向があるんだろうか.おもしろいのは,テストをやってる最中は「こんな質問だったら,自分は平均的な点数になるだろうな」と思いつつやっていたこと.

独りぼそっと座っていると,板前風というか職人風のひとがやって来て隣に座った.「まずいなあ.名前も顔も覚えてないわ.どこかで会ったんだろうけど.」ありがたいことに職人は自ら名乗ってくれて,初対面の norm さん (たぶん昔の名前; ネット上で斬られたことはあった) であることが判明した.いやあなんというか,無駄口を叩くような軽いひとではなくて,自分の拘りを着々と押しすすめて,みなが知らない間にすごいことを達成しているような雰囲気の職人気質のひとで,好感が持てた.

少し遅れて店に入ったグループで,ボクらのテーブルにやって来たのはコーポレート・ガバナンス研究で日本を代表する大物研究者 CG だった.「A さんが来るかもしれないので……」と見方によっては失礼なボク (「……」は「ぜひご一緒してくださいませ」と解釈してほしい).元同僚でもある A さんが来ないと分かって,CG さんはボクの斜め前に座った.そういえば初対面 (?) なのに自己紹介もしていなかった.有名人同士だからすでに互いに知っていたのでまあいいか.(とりあえずボクのことは大部分の参加者が知っている模様.きっとすばらしい研究が知れ渡っているのだろう (笑).ネット上での活動も多少は知られているらしいが,あくまでも副次的なもの (笑) にちがいない.)

以上二人と留学予定の大学院生 M さんを加えた四人で平成香川大学の話をしているときだった.ボクが

「そういえば少子化とか高齢化とかを overlapping generations model を使って研究してるOGMさん (女性) がうちにいますよ.世代重複モデルって聞いたことありますよね? セックスなしでどんどん子供が生まれるやつです.あ~,でも,《少子化》とかやってるからには OGM さんは sexes も入れてるのかも」

と発言.すると「セックスを入れてマッチングを入れたら均衡が云々」と,ノリノリの CG さん.平凡助教授のつまらん発言を見事にフォローしてくれたのは,さすが高名な研究者だ.

CG が席を外したあとは,さっきの舞いちゃんがやって来た.無意識的ながらボクがじ~っと送っていた視線に耐えかねたのであろう.(意識的ではないのです.アスペルガー傾向の特徴なので許してね.) ボクと norm さんのブログがどうのといった話をして移動していった.

しばらくすると東の代表的研究者で契約理論家の CT が目の前に座った.眼鏡がなかなおしゃれじゃないか.黙っていると緊張するので,「CT さんは人事経済学やりますよね? 専門家の意見を聞きたいんだけど」とボクから (ほかのひとにもたずねた問題を) 切り出した.平成香川大学の教員評価のことだ.概略をいい加減に話すと,専門家たちは「国立としてははじめて聞くめずらしい制度」と先進性を評価 (?) しつつ,かなり問題がありそうな制度 (バカな制度) であるとの意見だった.CT に至っては「ボクに外部評価させてくれたら,バカな制度だからやめろと言ってあげますよ」との力強いお言葉もあった.

リマーク.問題の教員評価制度というのは,「研究」「教育」「社会貢献」「管理運営」の4つのカテゴリそれぞれで教員を A, B, C に評価し,その教員個人の総合評価を重みづけ平均で決定する方法である.重み付け自体は所属学部の認める範囲内で各教員が年度はじめに申告し,年度終わりにそれにもとづいて総合評価を決める.たとえば教育カテゴリだと「今年度の目標」を年度はじめに申告しておき,その達成度を年度終わりにチェックしたりする.ボクの認識ではこれは多人数囚人のジレンマに近い.全員が提出しても報酬が増えるわけではない.提出者不足で評価自体が将来とりやめになるか,評価への依存度が低くなるほうが教員にとっては幸せである.しかしほかの教員がどうであれ,各教員から見れば自分は評価のための資料を提出したほうが有利になる.(提出しないと自動的に C 評価を受ける.) 今日の第一報告の言葉でいえば,「評価システムの失敗の実現」がめざすべき公共財となる.自己評価を提出しないのが,協力的な戦略なのだ.報告にあった実験では特に強制装置を導入しない場合でも一定の協力が見られたそうだが,残念ながらわが教員評価では協力者 (自己評価未提出者) はほとんど見られなかった.似たような囚人のジレンマは COE (Center of Excellence) の大学間競争にも見られると CT さんが指摘.「あんなものは無視しておけばいいのに『自分のところは落とされないように』と応募するから,けっきょく文科省の支配力を強めるだけ」と.

飲み会の場所を移すことになった.移動するとき,ボクの共著者といちぶに勘違いされている K さんが,「大学の雰囲気もよさそうじゃないですか,平凡助教授さん」と.さっきの教員評価の話が耳に入ってないのかな.

二件目の店で隣に座った大学院生は,大原美術館に行く予定だと.「そこもいいけど,直島も国際的にも知名度あるし,いいんじゃ? 地中美術館にベネッセハウスに村プロジェクト (正しくは家プロジェクト)……」たまたま彼は安藤忠雄のファンであったため,予定を変えることになった.ほかのひとはどうかと声をかけると,CT も直島に行きたいと乗って来る.我ながらいい情報を提供できたと満喫した.そころがあとで考えると,フェリーの本数が少ないことや出航時刻が中途半端であることなんかをじゅうぶん伝えていなかった.その大学院生は「非常に素晴らしかったです!!」とあとでメールしてくれたが,ほかのひとは時間的に無理だったのだろうな.

「平凡助教授さん,ジョギングにいい場所はこの辺にありませんか?」と聞いてきたひとを知らなかったので,CT に尋ねたがまた忘れた.すみません.Stanford ビジネススクール出身で都内大学勤務というのは記憶にある.しかし彼はボクが無責任に薦めたサンポート高松の埠頭 (?) をジョギングできたのだろうか.走ると最高に気持ちよさそうな場所だが,そもそもジョギングをしても怒られない所ではないかもしれない.

自らヤクザを名乗る関西のひと.学会のプログラムでしょっちゅう見た記憶のある名前.

あるひとに自己紹介された瞬間,10年前の採用人事に応募してきた方の名前であることを認識できて苦笑い.応募書類はすぐ廃棄したのだが,同一大学の二人からほぼ同一の研究内容で応募があったため,記憶からは廃棄されていなかったのだ.おそらく有力候補だったのだろう.ほかのひとが聞いていたので口に出せずにいたら,応募したことがあると自ら表明してくれた.

そんな事情もあって,特に学生のみなさんのお名前はすぐ忘れると思うけど悪く思わないでもらいたい.大学院生がしがらみなく就職市場に出て行けるための配慮だ (ウソ).ただ,経営学部や商学部所属の研究者も多いこの研究会は,ビジネススクールにとって重要な人材供給源と考えてもおかしくない.だから半分くらい本気が入ってるかも.いや,「百パーセント本気だ!」と言っておこうか.その方が今後「パワー」が生じて待遇がアップし,大学の職泊施設 (たいてい安いのだ!) なんかを利用させてもらえるかもしれない.

午前一時過ぎまで,なかなか気分のいい時間を特殊な人類とすごすことができた.ちょうどその時間にジャーナルのエディタが掲載承諾のメールを人知れず送ってくれていたためかもしれない.(正確には Your submission before acceptance というタイトルの,最終稿請求メールだが.)

追記 (5/22/2007)

  • 冒頭の日付を修正.フィクションだからそのままにしておこうとも思ったのだが.
  • 「自閉症スペクトラム指数」の自己診断ができるサイトにリンクを追加.自分が 2006年1月に自己診断した結果はこんな感じで,まあまま「バランス良く」 (笑) 高得点をとっている:

    • 社会的スキル 10点
    • 注意の切り替え 7点
    • 細部への注意 7点
    • コミュニケーション 9点
    • 想像力 9点

    やや分かりにくいだろうが,各項目の点数が高いほどその領域での自閉症傾向が強いということだろう.(たとえば「社会的スキル」の点数は高いほど社会的スキルが低いだろうし,逆に「細部への注意」 の点数は高いほど細部への注意傾向は強いのだろう.) 「細部への注意」については,判別力の低い質問項目 (3つほどある) の影響でやや低くなった面がある.経済学者や数学者にやらせたら軒並み高い点数になりそうな気もする.たとえば本日みつけたあるブログ記事では……いや,こちらからのリンクはやめておこう (笑い).

【2007/05/21 15:45 】
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「教員評価は問題点だらけだ.さっさとやめたほうがいい!」といった根本的な解決策を理事たちは受け入れないだろう.少なくとも学内から主張しても彼らは聞く耳を持たない.学外の人事評価の専門家あたりに彼らを教育することを ある平凡助教授の,なんということもない日々【2007/07/20 11:27】
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