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プロジェクト研究秘密扱い決定ルール

前回記事「プロジェクト研究発表会は原則オープンに」の続きだ.「今年度は守秘義務が必要な研究発表はないので誓約書は必要ない」というのが GSM の結論だ.これにより今年度については,市民的不服従を実行する機会がなくなった.ただ,これですべて解決ということにはならない.新たな問題点が出てきた.

■問題点 1. 過去にかんすること

去年の発表内容を秘密にしなければならないというのがいまだ解除されていない.

  • あの時点で秘密にすべきものは限られていたのに全部を守秘することになっている.また,
  • あの時点で秘密にすべきもので,いまだに秘密にしなければならないものはもはや存在しないはず.

早く解除してもらいたい.

■問題点 2. 将来にかんすること

  • 今後は秘密にするときは発表者にそれを明言してもらいたいし,いつまで (どういう条件が満たされるまで) 秘密なのかをはっきりさせてもらいたい.乱用を防ぐため,秘密にしていいことを限定したガイドラインを定めるといいだろう.
  • 去年とルール自体が変わったのか変わっていないのかはっきりさせてもたらいたい.発表内容を秘密にしたいかどうか明言しない学生のあつかいが去年と今年でちがうのだから,ルールが「原則オープン」に変わったことはほぼ確実である(「リマーク」参照).変わったのならばそのことをはっきりと周知してもらいたい (あるいは関係者にそのことを自覚してもらいたい).変わっていないのならば,なぜ変えずに問題点を放置するのかを GSM は明確にすべき.

リマーク

「公理的方法」で分析することにする.この方法についてはたとえば「資源配分の公平」(三原麗珠) であつかわれている.公理的方法は,考えようとしているルールがどういう性質を満たしているのか,あるいは満たすべきかを明らかにして,議論を深めるのに役立つだろう.(もっとも,上で指摘した問題点だけなら,わざわざこのような分析をしなくてもすぐ分かる.その意味では以下の分析は公理的方法の威力をほとんど伝えていないことに注意.) 実務でやるときは (このていどの複雑さなら) べつに記号化せずに頭の中でやればいいが,その際の思考様式としては記号化に近いことをするはずだ.

記述を簡単にするため,3人の発表者がいると仮定.これにより一般性は失われない.

ルールは
発表者の希望表明リスト p=(p1, p2, p3)

扱いリスト F(p)=(F1(p), F2(p), F3(p))
に移す関数 F と表現できる.
ただし p1 は 1, 0, -1 のいずれかの値をとる (二文字だがひとつの) 変数で,
・p1=1 は発表者 1が発表内容を秘密にすることを希望表明している状態
・p1=0 は発表者 1が発表内容を秘密にすることもオープンにすることも希望表明していない状態
・p1=-1 は発表者 1が発表内容をオープンにすること (秘密扱いしないこと) を希望表明している状態
をあらわす.p2, p3 も同様.また,F1(p) は 1 または 0 の値をとる (二文字だがひとつの) 関数で,
・F1(p)=1 は発表者1の発表を秘密あつかいする
・F1(p)=0 は発表者1の発表を秘密あつかいしない
をあらわす.F2, F3 も同様.

つまり,発表を秘密扱いすべきかどうかは,発表者たちの希望表明によってきまるようなルールを考えている.もちろん,各人の希望だけでなく発表する論文のなかみ,あるいはそれについての指導教授の意見などの要因を考慮するルールを考えることもできる.ここでは,そのようなほかの要因は発表者たちの希望表明にすでに織り込まれていると考えることにする.(たとえば秘密にすべき理由を見いだせない論文については,秘密希望の表明をすることを指導教授が禁じるなど.) 発表内容のうち特定部分のみを秘密にしたい発表者については,その発表者を便宜上ふたり以上の発表者 (その特定部分にたいしてひとり,その他の部分にたいしてひとり以上) としてあつかえばよい.

ルール F について,いくつかの公理 (要請,条件) を考えることができる.

公理 1 (個人主義). 各人の発表を秘密扱いすべきかどうかは, (ほかのひとが自身の発表をどうあつかわれたいかには関係なく) 当人の希望だけで決まる.

発表者1についてこれを定式化すれば,公理 1 は
すべての p1, p2, p3, p2', p3' について,F1(p1, p2, p3)=F1(p1, p2', p3') となる
ことを要請している.べつの言い方をすれば,p1 を 1 または 0 のいずれかに移す
関数 f1 が存在して,F1(p)=f1(p1)となる
ことを要請している.

例.GSM プロジェクト研究秘密あつかいを決定するのに使われたルールが2006年と2007年で同一だと解釈する一つの自然な方法は,以下のルール G を考えることである (発表者 1 について記述):
G1(1, p2, p3)=1;
G1(0, p2, p3)=1 if p2=1or p3=1(すなわち pj=1 なる発表者j が存在するとき);
G1(0, p2, p3)=0, if neither p2=1 nor p3=1 (すなわち pj=1 なる発表者j が存在しないとき);
G1(-1)=0.
残念ながらこの G は公理 1 を満たさない.

公理1を破るようなルールは,それなりの説明が必要だろう.発表者 1 の発表を秘密あつかいにすべきかどうかが,発表者2の発表にたいする発表者2自身の希望表明など外部的要因に依存して決まるということだから.以下では公理 1は満たされていると仮定する.

公理 2 (不偏性). どの発表者も同じルールで扱われる.すなわち,f1=f2=f3.

これについては異論はないだろう.2006 年ルールも 2007年ルールもこれを満たしていると考えられる.以下では公理2を仮定して, f1=f2=f3 となる関数を f と記述する,すなわち f= f1=f2=f3.

公理3 (オープン希望表明尊重). 特定発表者が自分の発表をオープンにすることを希望表明しているばあい,その発表は秘密扱いしない.

発表者 1 に関して公理3を表現すれば,f1(-1)=0 となる.これについても問題ないだろう.2006 年ルールも 2007年ルールもこれを満たしていると考えられる.

公理4 (秘密希望表明尊重). 特定発表者が自分の発表を秘密にすることを希望表明しているばあい,その発表は秘密扱いする.

発表者 1 に関して公理4を表現すれば,f1(1)=1 となる.これをそのまま認めるのは問題があるかもしれない.しかし「秘密希望の表明は,指導教授の許可のもとでやる」など,ガイドラインをはっきりさせておけば,これも望ましい性質となる.2006 年ルールも 2007年ルールもこれを満たしていると考えられる.

まず,公理 1 のもとで 2006年ルールを検討してみる.公理2, 3, 4 は満たし,かつ
f(0)=1 (*)
というのがこのルール F である.つまり,希望表明がない発表は秘密扱いとなった.

つぎに,公理1 のもとで 2007 年ルールを検討してみる.公理2, 3, 4 は満たす.かりに2007年ルール F' は2006年ルール F と同じだとする.

問題は f'(0)=f(0) の値だが,これはふたつの可能性がある.「今年度は守秘義務が必要な研究発表はない」ということなので, p1, p2, p3 は 1 とはならないことは明らかである.

  • ケース (i): 全員がオープン希望表明をしたばあい.
    このばあい,p1=0 でも,p2=0 でも p3=0 でもない (pj=0 となる発表者 j は存在しない).したがって f(0) にたいする情報はないので,なんともいえない.だが,全員の希望を聞いたとは考えにくい.事実はこのケースではないと思われる.
  • ケース (ii): 希望表明しなかった発表者がひとりでもいるばあい.
    このばあい,pj=0 となる発表者 j が存在し,「今年度は守秘義務が必要な研究発表はないので誓約書は必要ない」 ことから,
    f(0)=fj(0)=0
    というのが 2007 年ルールである.希望表明がない発表はオープン扱いになっている.あきらかに 2006年ルールの (*) と矛盾する.

以上から,
(a) 公理 1 が破られている
あるいは
(b) 希望表明しなかった発表者がひとりもいなかった
という特別のケースを除けば,ルール自体が変わったと考えざるを得ない.もし (a) が該当するならば,どうして公理1 を破るようなルールを採用するのかについて説明が必要だろう.そうでなければ,((b) のばあいを除いて) ルールが「原則オープン」に変わったのだから,その事実を GSM メンバーが認識して将来のルールを考えて行くことが大切である.

[リマークおわり]

「リマーク」では公理的方法の実務への適用例を挙げた.ここではあくまで素人が自分でできるていどの簡単な公理的分析ふう思考例をとりあげた.素人でもできる,公理的方法のちがった利用法としては,すでに専門家が行った公理的分析の結果を利用するやり方がある (「シャープレー値」の特徴を知りつつ,費用分担にそれを採用するなど).結果を利用するというのは直接的でいい面もあるが,せっかく公理的方法を学ぶなら,自らの思考でそれを使えるような学び方をした方が実務で役立つ場面も増えるだろう.

ここでの分析は,経済学というよりむしろ法的思考と親和性が高いと感じた読者もいるだろう.法解釈論でも立法論でも役立つ思考様式だと思う.(シカゴ流あるいは J. マーク・ラムザイヤー流の「法と経済学」で法学者が味わったようなショックはないだろう.だが,ちがう意味のショックはあるかもしれない.)

「リマーク」内の「例」では,ある公理を満たさないルールを挙げた.このように,あるいくつかの公理を思いついたとき,現実の典型的ルールはそのなかの特定の一部をみたしほかをみたさないものだ.逆にそのように特定の一部の公理だけをみたすルールの存在を探ることは,公理間の関係を知るためにも重要なことである.この考え方を (ほとんど病的といえるほど) もっとも徹底的に押し進めた極端な例が「退屈な穴埋め作業ぼちぼち進行中」で紹介した以下のペーパーである:

Masahiro Kumabe and H. Reiju Mihara. Computability of simple games: A complete investigation of the sixty-four possibilities. MPRA Paper 440, Munich University Library, October 2006.

【2007/02/24 16:15 】
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