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科研費非申請者アンケートへの回答

科学研究費補助金未申請者 (非申請者じゃないか?) にたいするアンケートが届いた.5月25日付けの文書で,ボクに届いたのは 7月2日.ちょっと遅くないか.じつは遅いからこちらから請求してみたのだ.どうやら
「科研費の申請資格がない先生に,どうして申請しなかったかというアンケートをお願いするのはおかしいのではないかという,学部事務の判断で先生に送付しませんでした」
ということのようだ.たしかにおかしいけど,そういう配慮は無用だ.お願いされても答える義務がないということはこちらもすぐ分かる.しかしバカな質問にもよろこんで答えるのが教員の資質の一部であるならば,バカなアンケートにもよろこんで答えるのが研究者の資質の一部であるかもしれない.そもそも大学が気にする申請率を計算するときは自分もちゃんと分母に入れられている.不利に扱われる対象にもなる.そしてアンケート用紙自体にボクの名前が入っている.黙っているわけにもいかないだろう.

さらに追加すれば,ほかの非申請者が「自分は量だけでいえば研究業績は出しているつもりである.質が問題であるという批判は甘受する」と回答していたのに違和感を持ったからである.(もう少しアピーリングに?)「科研費を獲得することを目標にすると,研究の量を減らさざるをえない」と言い直せばかなり納得できるが,それでも自分とは多少認識がちがうようである.というわけで自分もアンケートに協力してやることにした.

Q1 平成19年度科学研究費補助金に申請しなかった理由はなんですか?(複数回答可)

A1 以下が該当する.

  • 他の業務が忙しい 研究など
  • 応募できる研究種目がない 「人文・社会・情報科学の包括的すごい研究」などのテーマ
  • その他

さらに詳しく状況をご記入下さい。(業務内容、その他理由を詳細にご記入下さい。)

  • 科研費を獲得することを目標にすると,研究のクオリティを下げざるをえない.

    • 研究に余計な制約条件が入る,つまり科研費は研究にとって邪魔.科研費を獲得することを目標にすると,特定の価値観 (国民統制の強化や環境問題解決といった国家目標や審査委員の関心など) に沿った研究を申請することになる.特定の価値観に沿うという制約のもとで自分ができる最高の研究は,当然ながらそのような制約なしで自分ができる最高の研究より低いクオリティにならざるをえない.研究の制約は少ないほどよい.科研費申請を強要するのは,クオリティの高い研究はするなと言うに等しい.
    • 自分の研究を正当に評価できる専門家が国内にいない.自分がこれまでもっとも成果を上げて来た研究対象は,経済理論と情報科学の境界領域に属するある基礎的問題である.その領域の研究者はごく限られているうえ,その問題の専門家は自分と共著者以外には国内に存在しない.とても正当に評価される状況ではない.したがって科研費を獲得することを目標にすれば,苦手な分野の (より質の低い) 研究を申請することになる.

      (あるいは「人文・社会・情報科学の包括的すごい研究」といった,制約の少ないテーマで申請することになる.そういう広範なテーマで応募できる分野があるのだろうか.申請書のエッセンスは「だれも思いつかなかったようなすごい問題をだれも思いつかなかったようなすごい方法で解決する.必要経費は1円でも多すぎるかもしれないし,1兆円でも少なすぎるかもしれない.その用途も額も私をふくめだれにも予測できない.とにかくすごいことになりそうだ」ということになろう.[ブログ読者への注釈: 自分で作るのは面倒なので,だれかこの線ですごい申請書を作ってネットで配布してください.申請者情報さえ書き込めば完璧な申請書になるようにしてもらえればありがたい.] これでいくら獲得できるだろうか.)

    なお,科研費に縛られたためクオリティの低い研究をせざるを得なかったという言明はたしかに簡単には見つからないだろう.事実であっても明言したところで利益はないからである.だが科研費の類いがなかったためある研究ができたという言明はしばしば見られる.たとえば在日の研究者によるあるペーパー (Kumabe, M., Mihara, H.R., Computability of simple games: A characterization and application to the core, Journal of Mathematical Economics (2007), doi:10.1016/j.jmateco.2007.05.012; available as MPRA Paper 3296) の謝辞は,

    余計な研究費を獲得していたら,この研究はできなかったであろう

    と明言している.この種の言明はいちいち論文には書かないが,じつのところ私の研究の大部分に当てはまる.

  • 申請書を準備するための資料,特にジャーナルが不足.科研費を獲得するためにレベルを落とした研究をするには (International Journal of ??? ??? や International ??? ??? Review といった) 中堅ジャーナルまでふくめた文献調査をする必要がある.しかし平成香川大学ではそれらは入手できない.情報科学分野の主要ジャーナルも入手できないことがあった.これではまともな申請書は書けない.外部資金の獲得に左右されない安定した研究基盤があってはじめて,外部資金の獲得をするための環境が整う.
  • 研究者にとって科研費は研究のための手段であって目的ではない.手段と目的を取り違えてはいけない.科研費の奴隷となり科研費を神とするのは愚かだ.大学にとっては科研費獲得自体が目的になるかもしれないが (そうであるなら研究成果を出すことが目的でないとはっきり言うべきだろう),それならば小額しか獲得できない研究を奨励しても効果は低い.自分が申請する額は高々数万円ていどだろうから,獲得できたところで大学にとってはほとんどプラスにならない.それよりは自分が申請しないことによりほかの研究者の獲得のチャンスを高めたほうが大学のためにもなる.
  • そもそも自分は科研費の申請資格を持たない.科学研究者番号を持たないからである.申請する資格がない者が申請しないからといって,大学が問題にするのは筋違いである.申請できない者を不利に扱うのは不公平である.

その他科研費は問題だらけである.書くと長くなるので以下の記事「科学研究費補助金のデメリット」の全文を回答にふくめたい: http://theorist.blog6.fc2.com/blog-entry-70.html

総合的に判断すると,現時点では自分にとって獲得のデメリットのほうがメリットよりもはるかに大きい.そういった個々の研究者の事情を無視して一律に科研費申請を強要するのは,hostile な研究環境を作るだけだ.COE (Center of Excellence) と称する研究機関にたいしてわが大学の持つ比較優位 (研究の組織化・制度化が軽度であることなど) を失い,研究者の流出を加速することにもなる.もっと研究者の自律性と自由とを基本に据え,個々の研究者を尊重した研究環境を整備してもらいたい.

Q2 どのようにすれば今後科学研究費補助金に申請することができますか?

A2(制度面、インセンティブ等、ご自由にご記入ください。)

自分自身のことは研究テーマ次第なので分からない.研究をすすめるのに資金が必要で,科研費以外からそれを得ることができなかったら申請するだけの話だ.以下は一般論として答える.

  • そもそも申請数や申請率を上げることを目標にするのはまちがい.研究者個人の目標としてはもちろん,大学の目標としても疑問.研究者としては研究成果をとおして学問的あるいは社会的貢献をするのが目的であり,補助金を獲得するのは手段にすぎない.手段と目的をとりちがえてはならない.「どのようにすれば今後科学研究費補助金に申請することができますか?」という質問にたいしては,「科研費がなければできないような研究テーマを選ぶ」のが正解だろう.質問が狂っているのは明らか.
  • 科研費を獲得できなかったときに保証される最低限の研究費を高く設定する.最低限の保証が低いと,獲得できなかったばあい予算不足で研究計画を大幅に変更しなければならなくなる.また,すでに開始した研究ならば中断することになる.そのようにリスクが高いので,補助金を必要とするような研究テーマははじめから選ばないことになる.なお,上でいう最低限の研究費を科研費申請者に限定しても意味がない.単に獲得の見込みのない申請を増やすだけである.すべての希望者に一定水準を与える必要がある.
  • 関連するジャーナルを長期にわたって安定的に購読する.ジャーナルのような研究基盤が科研費獲得に依存するのは問題.ジャーナル購読が中断しても次の年に再開されるのを期待して,そのジャーナルの記事を取り寄せるのを先延ばししがち.その間研究は遅れ,補助金申請書もまともなものが書けない.そもそも補助金は特定の研究のために獲得するものだろう.ほかの研究にも使える,ジャーナル購入といった一般的な用途に使うのは「流用」ではないか.ジャーナルが揃ってなければ大学は優秀な研究者を集めることもむずかしい.
  • 申請率を上げるために申請資格者を絞る.分母が小さくなれば率は上がる.

以上

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【2007/07/04 18:18 】
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