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「平成香川大学憲章」への意見

「平成香川大学憲章(案)」にかんして意見を述べます.

これは「憲章」なのか? ある種の基本方針ということなら分かるが,「憲章」と呼べるほど根底的なことは書かれていない.たとえば「真理の探究」や「学問の自由の擁護」など,大学人がずっと守り続けて来た根本的な価値がどうして抜け落ちているのか?

まずなによりも自由が保障されなければ多くの研究はなりたたない.自由がなければ社会に迎合しない研究はやりにくくなる.ある種の地域貢献も単なる役所の手伝いで終わるだけだ.平成香川大学は本気で学問の自由や研究者を守る気概がないから,たとえば教授が刑事裁判で有罪判決を受けただけでクビにするのである.ほとんど避けがたい「医療ミス」で有罪判決を受けそうになった産婦人科医を学界や医療界が支援したのとはおおきな違いがある.大学の基本的価値への言及を忘れないでもらいたい.

以下,書かれている内容に個別にコメントする.

地域に根ざした……大学
イメージ悪すぎ.その地で生まれ育ち離れることができないという感じだ.そんなことでは「地域社会をリード」できるはずがない.地域を変革しようとするのだから,「地域に根ざさない」あるいは「地域と対峙した」などとすべき.
共生社会の実現
統一教会の「共生共栄主義社会」や原始共産制その他イデオロギーを連想させる言葉.「完全自由社会の実現」で置き換えるべきだ.
教 育
なんで空白を挿入する? ひじょうに意味がとりづらいし,検索もしにくい.「教育」が正しい.同様の不要な空白がほかにもある.
平成香川大学は,豊かな人間性と高い倫理性の上,幅広い基礎力と高度な専門知識に支えられた 課題探求能力を備え,国際的に活動できる人材を育成する。
読点の打ち方がおかしい. 「平成香川大学は,豊かな人間性と高い倫理性そして幅広い基礎力と高度な専門知識に支えられた,課題探求能力を備え国際的に活動できる人材を育成する」 あたりが適当ではないか.そもそも修飾語が多すぎる.ここに限らず読点の打ち方が悪くて意味が取りにくい文が散見される.
明確なアドミッション・ポリシーのもとに,多様な入学者選抜を行い
アドミッションポリシーを明確にしたら,多様な入試をしないほうが望ましいということになる可能性がある.多様な人材を入学させない方がいい可能性もある.よって「多様な」は不要.だいたい「憲章」に入学選抜のことを書くか? 選抜方法には触れず,「入学者を募り」とでもしてはどうか.
多様な価値観の融合から発想される創造的・革新的基礎研究
限定的すぎる.異なる価値観の対立から発想されることもあれば,あらゆる価値観から自由になったところでの発想もある. 「自由な発想にもとづく創造的・革新的基礎研究」あたりが適当ではないか.
「研究」について4つ項目が上がられているが,研究への余計な干渉ばかりだ.他人に研究の方向性を示してもらってもちっともありがたくない.各研究者の自由を尊重してもらいたい.まず最初に,研究者個人個人が自由に自発的に研究できるような環境を整えることを挙げるべきだ.
地域の発展に資する研究を推進する
削除した方がいい.潰れた方が望ましい企業があるように,没落した方がいい地域もある.特定地域の発展に資する研究が (プラスの) 社会貢献かどうかは一概には言えない.「地域の発展に資する研究あるいは没落に資する研究を推進する」としてもいいのだろうが,削除した方が早い.
社会貢献
社会貢献で挙がられているすべての項目が「地域」で始まっているのは限定的すぎる.地域貢献は大学のできる社会貢献のごく一部でしかない.大学の主要な生産物である「知識」は,地域に縛られず流通する.大学は居酒屋や風俗店のように場所に縛られるサービス業ではない.教育にしても卒業生が特定地域に留まることを期待するわけにはいかないし (そんなことをしたら大量に失業者を作り出すだけ),入学者を特定地域から募るわけでもない. 「地域」のいくつかは「社会」「世界」に置き換えられる.
地域の活性化に貢献する
前述の「地域の発展に資する研究」と同様.
基本的人権を尊重し,国籍,信条,性別などによる差別を排除するとともに
大学にとってそれ以前に大切なことがある.学問や表現の自由だ.自由は人権とぶつかることもある.また,差別を排除するというのは信条による差別を排除することと相容れない.差別的な信条もあるからだ.現行法のもとで国籍による差別を排除するのは実際上無理な話であり,現実に留学生は差別的扱いあるいは特別扱いを受けている. 「個人の自由を尊重し」あるいは次善の案としては「個人の自由を尊重し,思想,信条,人種,性別などによる差別を排除するとともに」あたりが適当.
安全かつ公正な……環境
「自由で公正な」のまちがいでは.単なる安全では価値がない.自由な活動ができる限り安全に行えることに意味がある.それにしても消極的な表現だ.
運営経費の大部分が国民から付託された資金であることを自覚し,これを適正に管理かつ有効に活用する。
国民から付託されたのではなく,強制徴収であることを自覚したほうがいい.国民付託であれ強制徴収であれいずれにせよ,資金を適性に管理すべき理由とは無関係.(私企業と違うこの事実は,むしろ資金を適性に管理しなくてむ済む理由になるくらいだ.) 「運営経費を適正に管理かつ有効に活用する」でいい.あたりまえなので削除してもいい.

以上

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【2006/12/21 16:53 】
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「平成香川大学将来構想」への意見

学内からの連絡やアンケートの類いが殺到するこのごろだ.年末ってのは大学からの連絡が少なくなる時期だと思っていたが,年末ぎりぎりの直前である今の時期はかえって多いのだろう.

「平成香川大学憲章(案)」と「平成香川大学将来構想(中間まとめ)」について意見を出せと言われたので,合計 46 ページある文書をじっくり読んで意見を書いていたら半日 (12時間) 以上経ってしまった.ほかの教員もボクのようにまじめに取り組んでいるんだろうか.同僚の労力の軽減に貢献できるかどうかは分からないが,もとの文書抜きで「将来構想」にたいする意見を載せておこう.(もとの文書は機密ではないが,なんせ平成香川大学の存在する「平成世界」の文書なので,コピーしてこなければこちらの世界の読者に見せられない.で,大量にコピーすると著作権の問題が生じかねないのでギブアップした.) 意見は問題点に集中するが,「将来構想」にはいいこともかなり書いてあることは指摘しておく.また,かならずしも官僚的な感じの文章ではないが,流行りの概念がヘビーに出て来るので,読みやすいとは言えない.一部抜粋しよう:

全学の経営管理体制の強化方策として,学長及び役員会を中心とした戦略的なマネジメ ントに対し,マネジメント戦略とビジョンの策定・実施,事業ドメインの展開,組織デザ イン,効率的な資源配分に関する具体的な戦略的マネジメント及びガバナンスを展開して いく。キャッシュフロー予測・評価能力やコストマネジメント能力さらに効果的な財務報告能力などに長けた財務スペシャリストの養成を目指し……

引用した最初の文のように,何十回繰り返し読んでも意味がとれなかった文が少なくなかった.


「平成香川大学将来構想(中間まとめ)」にかんして意見を述べます.別メールの「平成香川大学憲章(案)」で述べた意見の一部は,「将来構想」にも該当します.

3頁「進路確定率100%を目指す」
大学卒業直後に進路を確定したい学生についてはそれでいい.しかしそんな学生ばかりではない.定職に就かず自分の可能性をいろいろ試したい者,ボランティア活動に数年間を費やしたい者,留学を目指して頑張る者,いろいろいるはずだ.実際,私の出身校 (ICU) では卒業時に進路を確定しない者が多く,何年もかけてやりがいのある職を得ていた.卒業直後ばかりに注目することで学生の自由な選択を阻害するのはよくない.
3頁「十分に高い受験倍率を維持し」
これは望ましいことではない.高い受験率はアドミッションポリシーが曖昧であることをしばしば意味する.大学がアドミッションポリシーを明確にし,受験産業が信頼できる情報を提供するようになれば競争率は下がる.
4頁「多様な選抜方法,柔軟な対応ということは,必ずしも多種類の試験を多数回実施するということを意味するわけではない」
ならば「多様な選抜方法」ではなくて「多様な人材を獲得する」という言い方でいい.
12頁「研究推進の方向性」
研究への過剰な干渉になっている.他人に研究の方向性を示してもらってもちっともありがたくない.もっと各研究者の自由を尊重してもらいたい.研究者個人個人が自由に自発的に研究できるように環境を整えることを最初の項目として挙げるべきだ.特に,研究の基盤として電子ジャーナルを幅広く確保することを含めてもらいたい.
12頁「限られた人的・物的資源と立地の特色を最大限活かして研究活動を活性化し,大きく進展させるためには,将来に向けた研究推進のベクトルを定める必要がある。」
これが当てはまる分野は限られている.生産活動には最適規模というものがある.多くの研究は個人レベルで行うのが最適である.むやみに重点分野を定めても,ほかの研究からリソースを奪う効果しかない.(そもそも重点分野を定めるなら,限られた人的資源にたよらず外部から研究者を呼ばないとダメだ.) 魅力のある零細うどん店を十軒あつめて一軒の大型店にしたら,ほぼ確実にもとの魅力は失われてしまうということだ.
13頁「研究コーディネーター」
はぁ?
16頁「応募資格のある全教員について,科学研究費補助金への応募を義務化することを検討する」
検討不要.そんなことは百害あって一利なし.科学研究費のための研究は研究計画を狂わせる.特定団体に補助を受けては自由な立場からの研究は不可能.(じっさい科学研究費を獲得して行われた経済学研究は偏った内容になっている.) 科学研究費の非道徳性ほかさまざまな問題点については,以下の「科学研究費補助金のデメリット」を参照: http://theorist.blog6.fc2.com/blog-entry-70.html
16頁「学内の特許取得を推進・支援するとともに」
推進しすぎないように注意して欲しい.特許は他人による利用を制限する独占的権利である.その望ましさについては議論が分かれるところだ.自由な学術のためにはむしろないほうが望ましいとも言える.
28頁「戦略的ディスクロージャー」
この概念には,積極的な情報開示をするのが有利になるという考えが根底にあるはずだ.言い換えれば,不利ならば情報開示しないという考えが背後にある.情報開示の有利不利の不毛な議論を誘発する可能性が高い.(そうしているうちにコントロールできなかった情報が漏れてしまって,タイムリーに開示しなかったことにより結局は不利な状況に陥る.) 大学運営のほかの問題と違って,情報は戦略的にあつかわないほうがいい.大学構成員の発言の自由を無用に制限するからだ.そもそも戦略的にあつかおうとしても,そのコントロールは不可能に近い.「積極的情報開示」という言葉を採用した方がいいのではないか.

以上

【2006/12/21 16:49 】
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横尾真『オークション理論の基礎』

今年,オークションにかんする本を二冊ゲットした.

  • Peter Cramton, Yoav Shoham, and Richard Steinberg, editors. Combinatorial Auctions. MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 2006.
  • 横尾真. オークション理論の基礎: ゲーム理論と情報科学の先端領域. 東京電機大学出版局, 2006.

このうち横尾 (2006) を通読したので感想を述べたい.批評性もなにもないので「書評」ではなく「感想」だ.

まずボクがこの本を通読した事実とめったに本を読まない事実から,直ちに分かることがある.それはこの本を読むことの重要度をひじょうに高く見積もっていたということだ.この本に興味を持ったのは,それが情報科学とゲーム理論の境界領域をあつかっているためだ.

オークション理論はいまや経済理論の常識となった感があるので,最低限の知識は仕入れておきたかった.とりあえず自分が現時点で知っておきたいていどのオークション理論は『オークション理論の基礎』で勉強できたと思う.その意味では手頃な本が出てくれて助かった.しかし,ボクの関心はオークションではない.オークションを専門にするつもりはないのだ.

では感想をランダムに列挙しよう:

  • コンパクトで絵がかわいい.ねずみのやつとか.
  • 遊びの例を多く拾って来ているのは楽しい.さっそく海賊の宝石分配のバックワードインダクションや階段じゃんけんなどの例を学生なんかに披露した.後述する勝者の呪いのクイズにたいして,ある学生は「低めの買収価格をつけていったん蹴られて,その後もう少し高い値をつける」と想定外かつ現実的な回答をしてくれた (笑).
  • 説明はごく一部の例外 (アルファ・ベータ探索と5.6 節の最後) を除いて,とても分かりやすかった.(さいきんゲーム理論の分かりやすい本が増えていることから,後発は有利というのを差し引いても.) たとえば準線形の効用関数でのパレート効率性の意味なんかにも触れているのは親切.
  • 架空名義入札に触れる一方で collusion (結託,共謀) に触れていない (?) など,意外だったところもある.もちろん同じオークションに両方を要求するのは酷だろうけど.なお,談合については触れている.
  • 組み合わせオークション (複数商品のパッケージにたいする入札が可能) とダブルオークションをあつかった第5章はかなり新しい.著者自身の貢献もコンパクトにサーベイしてくれている.
  • 情報科学にかんする話題としては,探索や (勝者決定のための) 計算の複雑さより,「秘密分散」の技術を利用した「セキュアプロトコル」の話題に魅かれた.非落札者の入札額を主催者側が知ることなくオークションを実行する方法だ.イメージはあるていど掴めた.情報科学をいずれもう少し勉強してみたい気になった.オークションのセキョアな実行は,上記の Cramton et al. の本にも見当たらないトピックだ (目次と Introduction to Combinatorial Auctions と Combinatorial Auction Glossary を読んだ限りの判断).

「勝者の災い」のクイズとそれから思いついた問題を述べてみよう.まずクイズ.

  • あなたは投資家で,ある会社を買収しようと考えている.
  • その会社の正確な価値 v は分からないが,区間 [0, 100] の一様分布であることは分かっている.
  • その会社を買収すると,あなたはその価値を50パーセント増やして転売できる.
  • 買収価格 b を提示すると (提示は一回のみ可能),その会社のオーナは b > v なら買収に同意する(オーナは真の値を知っている).
  • 価格 b で購入した場合のあなたの利益は 1.5v-b となる.
  • 買収価格 b としていくらを提示すべきか?

このクイズは,条件付き確率の演習問題にちょうどいいかもしれない.答は『オークション理論の基礎』あるいは横尾真のサイト講義スライドを読めば分かるとおり,b=0 となる.正の買収価格を提示すると平均的には損をするのだ.わが学生の「低めの買収価格をつけていったん蹴られて,その後もう少し高い値をつける」というスバラシイ答は,残念ながら題意に沿わない.

ただ,上のクイズで複数回の入札を認めるとどうなるかというのは面白い問題かもしれない.たとえば会社オーナーにとって,何回までの入札を認めるのがベストだろうか? 1回では会社は売れないのでベストではないはずだ.このアイディアは卒業論文のネタに使えるかもしれない.(これがすでにやられているアイディアならばだれかここにコメントしてくれ.もし新規性のあるアイディアならば,だれかペーパーを書いた上でコメントしてくれ.謝辞をだれにすればいいかって? 分からない人は,秘密コメントでメールアドレスを教えてくれ.そしたら教えよう.)

追記 (12/21/06). 『オークション理論の基礎』が「談合」に触れていることに言及した.「架空名義入札に触れる一方で collusion (結託,共謀) に触れていない (?)」という言い方は,談合について触れていないという誤解を生む可能性があったため.本文では,複数買い手がひとつの名義で申し込むことを collusion と呼んでいた.それも一種の談合と言える.

【2006/12/17 17:56 】
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