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選挙とか市町村合併とかで思いついた,独創性のとぼしい実証研究ネタ

比例代表制のドント方式 (d'Hondt or Jefferson's method) の説明 (たとえばこちら) は,たいてい計算方法だけしめして意味をしめしていない.それで分かる人もいるだろうが,分からな人のほうが多いのではないか.ドント方式のポイントのひとつは,「各政党の各議席に優先順位をつける方式である」ということにある.つまり,その優先順位は「J 党と M 党のどちらを優先するか?」といった,政党を比較する形ではない.「J 党の3議席目とM 党の1議席目とのどちらを優先するか?」といった比較をするのだ.

具体的には,ドント式による優先順位は以下のようなものだ: すでに議席がいくつか配分されたとして,いま,次の追加的な 1 議席をどの政党に配分すべきかを考える.その議席を追加したあとに議席あたりの獲得票数はいくらになるかを各政党について計算する.そして,その《議席あたりの獲得票数》がいちばん大きい政党に,その追加的な議席を配分するのである.たとえば 3001票獲得したJ 党と1000票獲得したM 党があるとする.J 党が最初の 1 議席を獲得したときの《議席あたり獲得票数》は 3001,一方 M 党のそれは 1000 だから,その議席は J 党に行く.つぎの議席の配分を考えよう.J 党がその議席を獲得したときの《議席あたり獲得票数》は3001/2=1500.5 (すでに1議席を獲得しているから分母は 2になる),一方 M 党のそれは 1000 だから,その議席は J 党に行く.つぎの3議席目の配分を考えよう.J 党がその議席を獲得したときの《議席あたり獲得票数》は3001/3=1000.3 (すでに2議席を獲得しているから分母は 3になる),一方 M 党のそれは 1000 だから,その議席は J 党に行く.この比例区に3議席しかなかったらこれでおしまい.J 党は 3 議席,M党は 0 議席を獲得となる.政党が2つの例は分かりにくいので,読者は他の例も見るといいだろう.ポイントは「追加議席を獲得したとしたときの《議席あたり獲得票数》」を基準にするということである.「社会選択理論」あるいは「公理的方法」として知られる学問成果を活用すれば,本当は「整合性」などの公理によってもっと意味を与えることができるのだが,ここでは省略.

追加 (10/5/2005): 図式的に意味を捉えるには,こちらのページの説明,特に最後のグラフを見るといい.■

ところで瀬戸内海に面した市である高松は,近く塩江町との合併により,徳島県にも接する「県境のまち」になる.その後もいくつかの町が加わり,ある期間たとえば高松地区選出の市議会議員は 40 人,塩江地区選出の市議会議員は 1 人となる.ここで疑問になるのは,この議員定数というのはどういうふうに決めたかである.おそらく国家が「こういう風に配分せよ」と細かく決めたわけではなく,関係市町村の交渉のなかで決まったのだろうけど,どういう基準にしたがったのだろうか.かりに有権者の人口比にしたがっているとしても (べつに塩江人が高松地区から出馬してもわるくないだろうから,したがっていない可能性も大きいが),微妙な問題である端数はどうあつかわれているのかというのが気になるところだ.そこで実証研究のための課題をひとつ.このような配分議席数は最近になって出て来たものなので,プロの政治学者もまだ論文として発表していない可能性が高い:

  • 各地区への議席配分はドント方式ほかいくつかある比例配分方式のどれかにしたがった結果だろうか?
  • ある地区 A が他の地区 B よりも不利とみなせる配分結果を受け入れているばあい,地区 A は地区 B よりも他の面で不利な状況にあったと言えるか?

「他の面で不利な状況」とはたとえば (人口あたりの? 税収あたりの?) 財政赤字が大きいといった,数字ではかれるものがいい.客観的に観察可能な数字とは無関係に議席数は決まっているかもしれないし,そうではないかもしれない.ちなみにアメリカの下院の議席数は各州に配分されており,その配分方式にはいろいろと変遷があった.それは州同士の交渉ではなく (代表同士の交渉とも言えるが),国家レベルで配分の方式をひとつにきちんと決めた上でなされてきた.よって,そのひとつの方式をどういうものにするのがいいかという規範的・理論的な研究がなりたちえる.代表的な研究として,Balinsky and Young (1982) Fair Representation という本がある.

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【2005/09/02 10:20 】
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退屈な穴埋め作業ぼちぼち進行中

表の穴埋めという,tedious (退屈な) な作業の続くこのごろである.気分転換も兼ねて,何のことか説明しよう.

いま yes/no で答えられる基準があるとする.たとえば日本人を,男性/非男性(=女性,おそらく) とか (住民票上での) 東京在住者/非東京在住者 (東京非在住者?) に分けるような話である.基準がひとつならば対象は概念上 2 つに分けられる.基準がふたつならば,対象は4つに,三つならば 9 つに,四つならば 16 個に,五つならば 25個に,六つならば36個に---おっとまちがえた---三つならば 8つに,四つならば 16 個に,五つならば 32個に,六つならば 64個に分けられる.ところが概念上あるカテゴリが存在することと,実際にそのカテゴリに対象物が存在することとは違う.たとえば,「北海道在住で米国 MBA で東大工学部出身でオタク」なら存在するかもしれないが,「北海道在住で米国 MBA で東大工学部出身で非オタク」は現実には存在しないかもしれない.概念上考えられるカテゴリーに理論上あるいは経験上 対象物が存在しないとき,そこにひとつの (理論的あるいは経験的な) 命題が生まれる

ボクが共同研究者と現在進めている研究 (の一部) は,yes/no の二値で答えられるような基準を六つ持って来て,それによって考えられる26=64個のカテゴリのそれぞれに実際に対象物が存在するかどうかを調べるものだ.その作業をひとつひとつしらみつぶしにやっている (ただし 16 個分のカテゴリについては,存在しないことが作業前から分かっていた).「なんて単純な作業だ!」と思われるかもしれないな.

リマーク.関心あるオタクのために書くと,提携ゲーム (協力ゲーム) のひとつである単純ゲーム (投票ゲーム) を monotonicity,properness,strongness,nonweakness,そして極秘の二つの基準によって 64 カテゴリに分類しているのである.簡単なばあいとして有限人数の単純ゲームに限れば,そして具体的に挙げた最初の4つの基準だけで分類すれば,たとえばそれら4つのいずれも満たさないようなもの (---- と表記) は存在しない.Weak なゲームは proper になるからだ. (以下,基本的には- は non に対応; ただし最後の記号は - が weak を + が nonweak を表す.) 同じ理由で +-+-, +---, --+-, ---- で表記されるカテゴリに入る単純ゲームは存在しない.他にも,non-monotonic で proper で strong で weak な単純ゲーム (-++-) は存在しない.Weak で strong な単純ゲームは dictatorial となり monotonic になるからだ.これら5個以外の 11個のカテゴリについては,そのカテゴリに属する単純ゲームが存在することが,具体例を作ることによってしめすことができる.簡単で単純な作業なので,暇人は試みられるといい.もっと暇人は,与えられた有限単純ゲームがそれぞれの性質を満たすかどうかを判断するコンピュータプログラムや,このような具体例を自動生成するプログラムを書いてみると工学部当たりの卒業論文にできるのではないだろうか.責任は持たないが.(このリマーク内の用語はこちらのペーパー の Section 2.1 に載っている.)

リマークに書いた例はいずれも簡単に作れるので誤解を生むかもしれない.しかしボクらの考えた微妙なカテゴリに入る例を作る作業はじっさいはちっとも単純ではない.ひとつひとつの例をつくるために,けっこう高度な技を要するのだ.例を作るための前準備としていくつかの定理とか補題とかを作る必要があって,それにかなり頭脳を投入せねばならず,ほとんど正気を失いそうである.その準備が済むと今度は個々の例を作ることになるが,こちらはとにかく退屈な作業の量に圧倒されそうで,いまにも狂いそうだ.

で,64 個の穴を埋める作業の息抜きに,まったく関係ないペーパーを読んだら,ちょっとよさそうなアイディアを思いついた.そちらのアイディアは着手するかどうか分からないし当分は秘密ということにして,代わりにわが平成香川大学 GSM (大学院地域マネジメント研究科) の学生でもできそうな実証研究ネタでも披露しよう.「比例代表制のドント方式の解説がどのサイトも下手だなあ」と思いながら思いついたものだ.

つづく

追記 (11/5/2006). この記事の投稿者から,この秋公開になった関連ペーパーの情報が届いた.たとえば「11個のカテゴリについては,そのカテゴリに属する単純ゲームが存在することが,具体例を作ることによってしめすことができる.簡単で単純な作業なので,暇人は試みられるといい」という問題の答は,このペーパーの現バージョン Section 5 にある.もちろん 64個のエントリーを持つ表も載っている.本文に述べた 6 つの基準間の関係が一本のペーパーに網羅されているわけであり,手頃なレフェレンス・ツールになっている.

Masahiro Kumabe and H. Reiju Mihara. Computability of simple games: A complete investigation of the sixty-four possibilities. MPRA Paper 440, Munich University Library, October 2006.

【2005/09/02 09:54 】
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