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議案を絶対に通す方法: McKelvey のカオス定理
ルールの戦略的マニピュレーション (操作) の話をしたついでに多数決ルールの恐るべきマニピュレーションについて書こう.「多数決においては,投票対象とその順序さえコントロール出来れば,自分の思い通りの結果を実現出来る」という定理だ.ある議案 t が現状 s よりも多数にとって悪いものであっても,何段階かの投票を経れば t を多数決で勝たせることが出来るのだ.つまり,過半数が現状 s よりも好むような何らかの議案 b1 を提示して投票させ,その議案 b1 を s に勝たせる.つぎに過半数が議案 b1 よりも好むような何らかの議案 b2 を提示して投票させ,その議案 b2 を b1 に勝たせる……と言う具合に続けて行って議案 bk が bk-1 勝つようにする.そして最後の投票で実現させたかった議案 t が議案 bk を多数決で破るようにできるというわけだ.途中の議案 b1 から bkをうまく選べばこれができるのだ.

問題の定理は Richard D. McKelvey による Chaos Theorem と呼ばれるもので,ひとつひとつの議案が (イデオロギー的に左寄りか右寄りかとか,若者を優遇するか年寄りを優遇するかといった争点を軸とした) 二次元以上の空間の点として表せるようなばあいを扱っている.議案というのは通常複数次元の性質の組み合わせなので,これは自然な仮定だ.上記の結果は,ひとびとの選好 (好み) がある対称性をみたしつつ分布する極めて例外的なばあい以外にはかならずなりたつ.多数者の選好さえ知っていれば,投票のアジェンダ (投票対象とその順序) をコントロールする人は自分のもっとも好む議案を絶対に通すことができるのだ.恐ろしい結果だ.

ただしアジェンダをコントロールする人以外は無力かといえばそういうわけではない.じつは上の定理では,投票者が先読みをしないで「バカ正直に」投票することが暗黙のうちに仮定されている.投票者がある段階の投票をするときに,その先のことまで考えて戦略的に (洗練されたやり方で) 投票すればアジェンダをコントロールする人に対抗出来るのだ.マニピュレーションにはマニピュレーションで対抗というわけだ.

Games and Economic Behavior の最新号 (Volume 51, Issue 2) は 2002年に亡くなった McKelvey の記念号になっている.政治理論のジャーナルでないためもあって,ほとんどのペーパーはこの定理以外の彼の関心にかかわる問題を扱っている.だが McKelvey 教授自身はこの定理を自分で気に入っていると言っていた.ゲーム理論や社会選択を基礎とした理論である実証政治理論のなかでももっとも重要な定理のひとつである.
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【2005/05/15 09:20 】
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